Like always bus comes continuously...
*ネタバレあります
ゲイ映画が美しいのは、たしかに主演俳優たちの美しく、まるで非現実のような絵構成にあるからかもしれない。(ゲイ映画に詳しいわけではないが、大抵はその美しい絵構成で有名だ)
このファッション業界の重鎮でもあるTom Fordの初監督作品A Single Manは、ゲイ映画をとてもダンディに、それこそGQやAnOther Manに登場するようなスタイリッシュにキメられた男性たちが、「バスのようにひっきりなしに続いて現れる」映画だ。
主人公はキューバ危機の時代に生きる有名な文学教授だが、16年付き合っていた相手が交通事故で突然死してからは、まるで生きているような屍のような人生を送っている。
その屍のような人生は、ときに人間的というよりも、きれいに整頓され、形に整えられた彼の部屋や、スーツによって強調される。Tom Fordがファッションのひとだから、と一言で片付けるならそれで終わりだが、主人公を包む地位や服装を虚しく飾り立てる。
物語は長く連れ添った恋人を突然失った主人公が、次々に魅力的な男に言い寄られるも、その恋人を忘れられずに生きているような心でいるような人生を生きる話なのだが、ときおりはさまれる小宇宙のような映像美、ページをめくる様に進んでいく時間が、さながらすべてColin Firthを煙のように美しく包み込む。
恋人の死に際にそばにいなかった主人公は、何度も夢で彼が死んだ場面にスーツで立ち現れ、その死体に歩み寄り、隣に寝そべり、そしてキスする。最後、死ぬ直前に恋人への思いをなんとか乗り切るが、そこへまた死が訪れる。
なんというか、キューバ危機時代の核の恐怖、死の匂い、冷め切った思い、が相まった、短くもはかない二人の恋人の物語で、MVを見ているような気分であった。
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