*ネタバレしてます
前作のSkyfallの興行収入がかなり良かったために、今回Spectreではそのさらに上をいく興行収入を目指した作品となっていたが、確かにその期待を裏切らないエンターテイメント性だった。
前作のSkyfallの興行収入がかなり良かったために、今回Spectreではそのさらに上をいく興行収入を目指した作品となっていたが、確かにその期待を裏切らないエンターテイメント性だった。
Daniel Craig演じるJames BondがCasino Royaleで幕を切った時から、Bondの心に残るは本気で愛し、一緒にいるためにMI6退職にまで至ったVesper Lyndoだったが、今回SpectreではBondは宿敵であり元義理兄であったBlofeldを倒し、ついに運命の相手と一緒にいることを選ぶ。そして重要なのは、Vesperも強くて頭が良い女性だったが(しかも最初は全然Bondには見向きもしない)、今回も幼い頃から殺し屋の父の元、戦闘術を教え込まれた医者のMadaleinne SwannことLea Sedouxがボンドガールを務めていることだ。Lea Seydoux自身もインタビューで、こういう強い女性がボンドガールになるのはこの時代に合っている、ということを言っていたが、まさにその通りなのであり、ただBondが助けに来るのを待つのではなく、自分も闘える勇気があって、お互いに助け合えるというのがミソなのだ。実際、Spectreのアジト(言い方が古い)に向かう列車の中で屈強なSpectreの殺し屋にBondがこてんぱんにされ、あと少しで殺されるところだったのを、Lea Sedouxが銃でもって助けに来る。幼い頃、寝ている間に父を襲いに来た殺し屋たちをナイフで倒したというぐらいなのだから、相当の腕前なのだろう。
それにしても、007シリーズでの見所(?)のひとつに拷問シーンがあるようなのだが、今回BlofeldがBondに拷問するシーンでは、ロボトミーのような手術を施そうとする。実際この手術は精神患者に一昔行われていたが、この手術を受けると暴れなくはなるが、ほぼ植物人間のようになるのである。そういえば、ブロフェルドは今回Bondに初めて会う(再会した)とき、”cuckoo”といい、それをひたすら面白がるようにBondに言う。自分はBondが里子としてやってきたせいで父親を取られ、それが許せなかったブロフェルドは父親を手にかけ、殺戮者として目覚めていく。そんな風にして他人の家にやってきたBondをカッコーに例える。わたしはこれでつい”カッコーの巣の上で”(1975年の精神病院が舞台の映画で、ロボトミー手術も出てくる)を思い出したが、きっと偶然ではないのだろう。ブロフェルドは拷問の前、Bondの愛するVesperやMを死に追いやったのは自分だ、自分がこれまでずっとBondを苦しめ続けてきたのだと明かす。ブロフェルドの活動はつまり、すべてはBondの心を砕くことにあったのだ。そして、最後にロボトミー手術を施すことでこの苦しみの仕上げに入ろうとしていたのかもしれない。
ラストで、右目を失い、足を負傷しながらも、結局Bondはブロフェルドを殺さず、Madaleinneの元へ向かう。俺には(ブロフェルドを倒すよりも)もっと大切なことがある、と言って。そして、静かにブロフェルドは二人が仲良く抱き合い、歩き出していくのを見つめる。最後にBondは勝ったのである。そして、愛するひとと歩んでいく姿を見せることで、ブロフェルドは完全に自分の負けを自覚する。
それにしても、SkyfallではまだこのSpectreの正体がBlofeldであることはわからなかった。
”彼らは地図には載っておらず、国家でもなく、個人なのです。(略)その顔や制服、国旗が見えますか?いいえ。わたしたちの世界はもう明白ではありません、不透明になっているのです。そんな影の中でわたしたちは戦わねばなりません。”と、00部門が危機に晒される中宣言するMの言葉に、今の時代を重ねて見たのはわたしだけではないだろう。特にISの活動なんかは特にそうだ。イスラム国は今は存在しない国家を求めて過激な活動を続けているが、彼らは明白に拠点を定めてそこだけで活動しているのではなく、今やどこにでも存在するのだ、とフランスでのテロの際に思ったひともたくさんいるのではないだろうか。ブロフェルド自身は個人的な恨みを果たすために、ボンドを苦しめる事件を起こしていたが、このSpectreが起こす様々なテロや世界に蔓延る犯罪には、今や明確な目的や姿さえわたしたちには見えない。一国家(特に今は西欧諸国)を手玉に取り、彼らをけしかけ、迷わせ、戦わせて、裏で笑っているのかもしれない。
”彼らは地図には載っておらず、国家でもなく、個人なのです。(略)その顔や制服、国旗が見えますか?いいえ。わたしたちの世界はもう明白ではありません、不透明になっているのです。そんな影の中でわたしたちは戦わねばなりません。”と、00部門が危機に晒される中宣言するMの言葉に、今の時代を重ねて見たのはわたしだけではないだろう。特にISの活動なんかは特にそうだ。イスラム国は今は存在しない国家を求めて過激な活動を続けているが、彼らは明白に拠点を定めてそこだけで活動しているのではなく、今やどこにでも存在するのだ、とフランスでのテロの際に思ったひともたくさんいるのではないだろうか。ブロフェルド自身は個人的な恨みを果たすために、ボンドを苦しめる事件を起こしていたが、このSpectreが起こす様々なテロや世界に蔓延る犯罪には、今や明確な目的や姿さえわたしたちには見えない。一国家(特に今は西欧諸国)を手玉に取り、彼らをけしかけ、迷わせ、戦わせて、裏で笑っているのかもしれない。
Though much is taken, much abides; and though
多くが取り上げられようと、残るものもある。だが
We are not now that strength which in old days
我らはいま、天と地を揺るがした昔ほど強くはない
Moved earth and heaven; that which we are, we are;
だが、わたしたちはみなひとつに英雄の心を持っているのだ。
One equal temper of heroic hearts,
時と運命の流れで弱くはなったが、意思の強さは変わらない
Made weak by time and fate, but strong in will
生き永らえ、探し求め、そして見つける、わたしたちは屈することはない。
To strive, to seek, to find, and not to yield.
Ulysses - Lord Alfred Tennyson (1809-1892)
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