スキップしてメイン コンテンツに移動

The Squid and the Whale

The Squid and the Whale
*ネタばれてます





特にウェス・アンダーソン監督のファンというわけではないが、彼はどうやら"親子"に焦点を当てた映画が多いようだ。

この「イカとクジラ」はストーリーこそシンプルなれど、ダレることなくなぜだか最後まで釘付けにされてしまった。

アメリカでは離婚が多いというが、子供たちは両親の離婚に敏感である。

しかし、映画内で離婚の原因は分かるようで分からない。

ただ最後まで観て感じるのは、総じて家族から心が離れていったのは母親であるということだ。

カウンセリングを受けさせられてやっと、兄のウォルトは小さい頃自分と母だけでパーティを抜け出して「ロビンフッド」を見に行ったこと、そして自然博物館で「イカとクジラ」が死闘しているオブジェを見たことを思い出す。



しかし、母親の方はというと、すぐには答えられないほど曖昧な記憶、もしくは忘れされているようだ。

父親は家族の前で突然過労で倒れ、救急車で運ばれるが、その際母親と一緒に見たという「勝手にしやがれ」の映画でジャン・ポールがジーン・セバーグに最後のシーンで吐き捨てる言葉を突然口にする。「degueulasse(デギュラス)(最低)」。



父親はここで、
「お前は最低だ」と言うのだが、実際この「勝手にしやがれ」では、ジャン・ポールとジーン・セバーグの間での最後の会話では、正確に言えばジャン・ポールは"セバーグに対して"「最低」と言ったわけではないようだ。

「これは最低の状況だ」

とつぶやいたジャン・ポールに対し、そばにいた警官がそれを引き取ってセバーグに「あなたは最低な女だ、と言っています」と告げている。

ミシェル(ジャン・ポール): c’est vraiment dégueulasse. (最低だ)
パトリシア(ジーン・セバーグ): Qu’est-ce qu’il a dit ? (彼はなんて言ったの?)
警官: Il a dit : Vous êtes vraiment une dégueulasse. (あなたは本当に最低な女だって言ってます。)
パトリシア: Qu’est ce que c'est dégueulasse ?  (最低って?)



母親はここで、
「わたしが最低な女だって言いたいの?」と反論するが、
ともすれば、大事な所で過労で倒れてカッコが悪い自分に対して、
「この状況って最低だ」と呟いているようにも取れる。

しかし母親は、父親に「一緒にこの映画(「勝手にしやがれ」)を観たよな?」と言われても思い出せない様子である。

父親やウォルトは、母との思い出に浸る。
父は自分があげた自作の本が母の本棚に並んでいるのを見て、そしてウォルトは母と見たイカとクジラのオブジェを見て。

だが、母親は父親と一緒に集めた家具を一掃し、新たな生活を始める。
唯一無邪気なのは、弟フランクである。ウォルトや父親と違って、母親とはまだ心が離れていないと感じている。

だが、三人ともどうやら年相応の行動が出来ず、そして女性とうまくやれずにいる。

夫婦仲のこじれがいつどこから起こったのか、映画では全く触れられていない。

父親の作家としての人気が低迷し始めたときだろうか、
それともその父親に反して母親が人気作家の道を歩み始めたときだろうか。

プライドの高い父親にとって、妻が自分より人気を得ていくのは心底鼻を折られる気分だったであろう。

母親が、父の家事を手伝わないことに腹を立てているのだから、母親の作家としての仕事が増えてからかもしれない。

母親も、自分の人気度と反比例する父の低迷具合と、うまく折り合いをつけられなかったであろうことは確かだ。そこで父でない男との浮気に走る。

60年代が舞台なので、母親の自立、女性の自立が今ほど起こっていないであろう時だが、
自分のことで手一杯な母親が、もはや家族として幸せを求めておらず、そして残された父やウォルトはその幸せだった頃の幻影をひたすら追い求めるのである。

コメント

このブログの人気の投稿

さらば青春の光

We're the MODS = psycho

Why Taylor Swift is so FABULOUS ???

Why Taylor Swift is SO FABULOUS?

Taylor Swift no body, no crime 和訳