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The Bling Ring



The Bling Ring - キラキラしたおバカたち

*ネタバレありです、



"キラキラしたやつ"、そう命名されたハリウッド強盗団たち。

そんな彼らを映画として映した"The Bling Ring"は、たしかに女の子なら誰でもあこがれるブランドの服やアクセサリー、ゴージャスなコーディネート、セレブたち御用達のクラブ、そしてセレブたちの家々、と私たちがセレブたちに求めていたものを垣間見せてくれる。

だが、一方で「私たちセレブ中毒を映しだしている」とも言われているし、たしかにそれもそうだ。

そして、遠く離れた日本で冷静にこの状況を観察するなら、ただこの一言に尽きてしまうと思う。

「ハリウッド的キラキラした世界、でも中身は空っぽ」

ソフィア・コッポラの描く彼らの世界は、史実に基づいているのでドキュメンタリー映画にも近いが、どちらかというと、「リアリティ番組の映画化」だといえそうだ。




実際にブリング・リングに取材したVanity Fairのライター、ナンシー・ジョー・セールズが執筆した本では、コッポラの映画も含め、冷静に事実へ迫っている。


実際の史実本はこちらから(Amazon)↑


わたしが、「空っぽ」というのは、セレブにまとわりつくアメリカ国民たちが、セレブたちにそこまで入れ込む理由が、彼らのようにキラキラした存在になりたいから、というそれこそ誰にでもある人間的欲望ではあるが、ともすればその欲望すら、ぺらぺらしているからだ。



映画では、コッポラはあくまで彼らがなぜ犯行に及び、どういった背景がそこにはあったのかということを、垣間見せる程度である。だが、わたしたちは映画がただ一人Emma Watson演じるアレクシスをメインにしている、ということははっきりとわかる。事実、この事件でアレクシスのみがリアリティ番組に出演し、そして裁判の際もセレブ的注目を浴びているからだ。最後、映画はアレクシスがテレビ番組に出演しているシーンで終わる。「わたしのすべてを知りたいというかたは、ニッキーフォーエバードットコムまで、」とEmmaがカメラ目線で話すところだ。






M.I.A.の最新アルバムから"Bad Girls"が流れ、メンバーがそれを口ずさむシーンでは、



Live Fast, Die Young, Bad Girls Do It Well...



まるで生き急ぐかのように自らの欲望を次から次へと満たそうとする彼ら。そして次の瞬間クロエが運転する車がバンに衝突し、クロエは鎖骨を折る怪我を負い、飲酒運転容疑でつかまってしまう。

だが、別に彼らは死なないし、これにも懲りず、盗みを続ける。なんと生ぬるいというか、切り上げが悪いやつらなんだろう。

後に、ニックは、「アメリカ国民はボニーとクライド的な悪が好きだからね」と、自分が人気になった理由を説明して見せるが、彼らが人気な理由は、別に「ボニーとクライド」的な、大掛かりでド派手な犯罪者だからというわけでも、彼らが最後銃撃戦で派手な最期を迎えるからでもない。

ただ友達申請を送ってくるのは、"自分がちょっとやってみたかったことをして見せた、同世代の犯罪者"であるだけだ。
いまや、facebookではそうした"有名人"と"友達"であることはちょっと誇らしいことなのである。

インターネットで、自分らのやってのけた犯罪を見せびらかし、そしてfacebookに800人以上の友達申請が来たことをニックは喜ぶが、彼らの"仲間としての"絆は脆く、まるで「ソーシャルネットワーク」でマーク・ザッカーバーグが元カノに送った申請が承認されるのをいつまでも待っているように、儚い。

「SNS世代の犯罪」ということも、メディアは指摘している。

それも、もちろんである。

だが、ナンシーの本を通して、彼らの実際の証言や、ニック証言後の様子などを追っていくと、ただ単純に彼らがバカで、それを容認する人々も、ただバカなんではないだろうか、とすら思えてくる。

アレクシスの母親の教育など、鼻で笑いたくなるほどだ。
子供たちを学校に行かせず、ホームスクーリングする彼女は、それこそアメリカナイズされたオリエンタリズムを信仰し、痩せる薬として、麻薬であるアデロールを娘たちに与えている。

アレクシスがVanity Fairの取材を受けている際となりにいる母親の態度などは、自分が彼女のマネージャーであるということをアピールしたくてたまらないといった様子だ。

首謀者といわれるレイチェルは、元々お金持ちで、父親はベガスに住んでいる。しかし、映画冒頭から彼女は、ハリウッド宅ではなく、パーティに来た人々たちの車をこっそり開けて、シート横の財布をかっぱらっていく。映画では、彼女が金持ちであるということは特に示唆されないが、彼女は金のためにやっているというよりも、「悪いことが大好きな、大胆で目立ちたがりな女の子」でしかないのかもしれない。

唯一の男の子で、一番検察にも協力的に証言したニックは、事件後ゲイであることをカミングアウトしたが、一方で、この事件全体が彼のカミングアウトをするための長い道のりだったのではないか、という声もある。彼は物語中、唯一、セレブ宅に侵入している間おろおろする、まともな人物だと思える。事件発覚後は、ストレスのあまり毛が薄くなり、すべてをぶちまけたい、という態度であった。

だが、彼も検察側に協力した後、かえって多くの嫌疑にかけられてしまったことや、協力していた弁護士が別の案件で逮捕されたことで、その態度は一転する。

「セレブ中毒社会を反映する、SNS世代の犯罪」

だが、裏を返せば、空っぽな世界だ。セレブ社会も、SNSも。


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